自分たちの身に危険が迫ったとき、「命」に優先順位をつけるなら…。

メイコは一番にミクリンレンを迷わず選ぶ。
子どもたちは守るべき対象だから、無条件に、反射的に身体が動いてしまう。
カイトが二の次なのは「信頼」しているから。
そうやすやすとやられるタマではないと信じているから、助けるのは後回し。
自分の身の安全ははなから考えていないメイコさん。
無鉄砲というよりは、平時から頭の片隅にいつも念頭においている、既定のことを実行するだけ。
家族を大切にするあまり、機械的でドライな思考のメイコ。

それと正反対なのがカイト。
幸せがいつまでも続くと信じて疑わなくて、突然の事態に陥ったときは、
まず「みんなが助かる方法は無いのか」と咄嗟に考えてしまう。
無理だと判断したら、次に誰を助けるかに思考をシフト。
自分のことは後回しなのはメイコと同じ。
しかし、苦悩の末メイコを一番に選んでしまう。
子どもたちのことはとても大事に思っているけど、それでも土壇場で「一番」守りたいのは、メイコ。
段階を経てその判断を下し、ようやく足が動いたときには、メイコは子どもたちを庇って斃れた後。


そんなカイトにメイコは「甘ちゃん」だと肩をすくめてみせるけど、
自分が助かることを最初から念頭においていないメイコに、
内心怒鳴りつけたいほどのもどかしさを感じるカイト。


どうして遺された者のことを考えないのか、と。
めーちゃんはみんなにとってかけがえのない存在なんだよ、と。
自己満足で勝手にいなくなるなんて絶対に許さない、と。


さすがに怪我人相手に激昂する訳にはいかないので、傷に障らない程度に抱き締め、
ぐすぐす泣きつくことで、助かった安堵感を噛み締める。



といったやりとりをしている病室の二人は萌ゆる。
これが墓標の前とかだと心底救いがない。






何故自分の身を犠牲にするのか。
――それは守りたい人がいるから。

誰を守るのか。
――弱き者たちを。
――……愛する只一人を。

その一瞬の遅れが、すべてを決める。決めてしまう。

互いが互いの一番で、何よりも守りたい人だったらよかったのに。
ただ、相手を守ることだけ考えていられたらよかったのに。
何で答えが食い違うんだ。
何で選択肢が存在するんだ。

そんなことを考えてしまう僕は今、ぞっとするくらい醜い顔をしているのだろう。

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