さよなら、いとしいひと。

なんて、ね。そんなこと言わせないよ。

だって、すぐにまた逢えるから。


メイコのいのちに終わりが来たその時は、カイトはそれを最後まで見守り、
メイコが動かなくなったあと、自らもソフトウェアとしての活動を静かに停止する。

もちろん、一人でひっそり逝こうと家出したメイコと、最後の大喧嘩を繰り広げた後に。
勝手な行動に怒って、行き場のない理不尽さに怒鳴って、愛するひとを失う恐怖に泣きわめいて、
行かないで、死んじゃやだと駄々を捏ねて、それでもどうしようもないことを思い知ったあと、
一番いい笑顔でメイコを見送ります。

メイコの行動は決して不思議ではありません。
何故ならカイトが同じ立場におかれたら、カイトもまた、こっそり姿を消すに決まっているからです。



寿命じゃない場合。
同期用入出力ポートの損傷で、新しいデータや動力エネルギーの補給ができなくなって、
もう手の施しようがなくなったときは、二人をコネクタケーブルで直につないで、カイト側からエネルギーを流して、
残り短い命を分け合い同時に終えるのも萌えます。
同型だからできる、最後の奇跡。


「一度しか言わないし、反論も受け付けない。僕の世界はめーちゃんを中心に回ってるんだ。
 軸を失った世界で抜け殻のように残りの生を潰していくことより、
 今、めーちゃんといるこのときを、たった5分延ばすことの方が、僕には大事なんだよ」


それが終わればもう何もいらないから、と拒否されたらその場で死んでしまいそうな顔で笑うカイトに、
めーちゃんは何も言える訳がないので、かくして終焉へと向かう二人きりのエクソダスが始まるのです。
これも一つの究極のハッピーエンド。





いつか終わりのときがきても、きっと、ずっと永遠に。
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